私たちの経験から学んでほしいこと
私が『ぼくのこわれないコンパス』の監督を務めた経験は、あなたの創作活動の道のりとは異なるものでしょう。
私自身は今後、映画制作の道を志そうとは思っていません。私が本当に取り組むたいミッションは、トラウマを抱えた子どもたちを支えるためのリソースを提供することです。すべての子どもたちが夢を持ち、未来を想像しながら遊ぶことのできる世の中を作りたいのです。私は映画が大好きです。しかし、映画はそんな私のメッセージを伝えるためのツールに過ぎません。
『ぼくのこわれないコンパス』の制作過程を共有することで、私の経験をあなたの創作活動の足しにすることができれば幸いです。
創作活動に最も必要なもの:
あなたのコンパス(心)。
自分が作りたい作品に100%の信念と確信を持つこと。そうすることで困難な時も進み続けることができます。
諦めないこと。絶対に、諦めないこと。必ず方法はあります。
謙虚になること。やさしくなること。自分と他人を許すこと。
一人ではできません。仲間とともに進むことが大切です。
悪い知らせ
思っているより時間がかかることでしょう。
時にはとても孤独に感じることでしょう。
どんなに準備をしても、必ず予想外のことが起きます。一旦深呼吸をして姿勢を整えましょう。きっと大丈夫です。進み続けましょう。
予想よりもお金がかかることでしょう。
ほとんどの人は、あなたの作品が完成するまであなたのビジョンに共感してくれないでしょう。
ほとんどの人は、あなたの活動に興味を示さないでしょう。
友達だと思っていた人たちに陰口を言われるかもしれません。集中力を切らせて軸を見失ってはいけません。噂話に翻弄させてはいけません。
将来仲間になってくれる人に限って、最初は疑い深く、守備的でしょう。仲間ではなく競争相手として見られるかもしれません。それでも落胆してはいけません。あなたの活動が本当に重要で、大切なミッションに沿っているものなら、いつかその人は味方になってくれます。そしてあなたもその人の味方になるでしょう。
時間はいつも不十分です。どれくらいの時間とエネルギーを費やすかを決めることができるのはあなただけです。しかし、犠牲は必要でしょう。
自分自身の足りない部分と向き合わなくてはなりません。自分に対する不安、疑い、そして恐怖があなたに付きまとうでしょう。しかし、自分と向き合った経験はあなたを成長させます。
良い知らせ
あなたは作品を必ず完成させることができます。私たちがこの映画を作ることができたように。もしその作品が、本当にあなたが信じることのためなら、必ずやるべきです。
予想外の方法で仲間に出会うでしょう。焦らず待つことが重要です。
世界に変化を起こしたい人々にとって、あなたの経験は道標になるでしょう。
人間関係
仕事でもプライベートでも、人間関係を見直す必要があるかもしれません。
他人に自分のビジョンを信じてもらうためには、高いコミュニケーション能力と優しさ、決断力、謙虚さ、そして妥協が必要です。そんなスキルを今のあなたは持っていないかもしれません。しかし、さまざまな性格と経験値の人々を集め、彼らの異なる意見をまとめるためには重要なスキルです。全員と一致団結して目標を達成することが大切です。
プライベートと仕事を分けることは難しくなるかもしれません。何年もかかるプロジェクトの場合は特に、チームメイトには十分に余裕を与え、プライベートを蔑ろにしてはいけません。
私たちのチームでは、活動中にご家族を亡くされた方もいました。新型コロナウイルスの蔓延は全員に影響を及ぼしました。仕事や収入が突然失われた人もいました。そして別の国に移り住んだ人もいました。メンタルヘルスの問題も浮上しました。新しい仕事や予想外のコミットメントが必要になったこともありました。
一緒に働く仲間には、亡した人を悔やみ、休息をとり、そして前に進む時間を与える必要があります。それはプロジェクトの遅延につながるかもしれません。しかし、仲間が必要としているのはあなたのサポートであり、支配ではありません。それに、遅れが出たからといって作品が完成しないわけではありません。そのせいで難しい決断に迫られることはあっても、チームメイトを気遣うことが正しい選択です。それを踏まえて、避けることのできない期限や選択と向き合わなくてはなりません。
お金
作品を完成させる資金のためにどれほどの努力をして、辛抱し、自ら投資し、そして手放す準備ができているか、正直にならなければなりません。
映画の場合は、作品の制作前、制作中、そして制作後の毎日がチームや他の誰かにとって時間とエネルギーとお金を消費することになります。
時には私たちのプロジェクトに不一致な人材に仕事を依頼したこともあります。それにはお金も時間もかかってしまいました。
5年分の予算を組むのは容易ではありませんでした。こんなに長く続くと思っていなかったからです。当初は6ヶ月の制作期間を予定していました。その6ヶ月は1年になり、やがて2年になり…。進み続けながら調整をしていきました。
5年間に渡る制作の中でかかった費用の内訳がこちらです:
期間: 2017 - 2021
撮影日: 400+ 400日以上
ロケーション: 300+ 300地点以上
プリプロダクション 50万円
(準備費用)
プロダクション費用 560万円
(監督、撮影、翻訳、通訳、ロケーション班、サポートスタッフ、施設での撮影で使用した小道具、カメラ、マイク、装備、交通、飲食、宿泊)
ポストプロダクション費用 280万円
外部委託費(編集、音楽、ミキシング、アニメーション、イラスト、ナレーション、カラーコレクション)
その他費用 230万円
総額:¥10,750,000
クリエイティビティを用いて費用を抑えることができないか、考えるとよいでしょう。周囲の力を借りれる時は借りましょう。しかし、協力をしてくれるすべての人が、プライベートを削って手を貸してくれていることを忘れてはいけません。お金を払った仕事もそうでない仕事も、費やしてくれた時間を尊重しなくてはなりません。作品が完成した際に、全員に感謝の気持ちを示す方法を考えておきましょう。
ミーティング
私たちはたくさんの会議を重ねました。あまりにもたくさんあり、途中で数えるのもやめました。話し合いや事後報告はとても重要です。これはプロジェクトによっても異なりますが、少なくとも私たちの映画にとっては、欠かせないものでした。
ぼくのこわれないコンパス 絵本
絵本は16ヶ月ほど前に、映画のイラストレーターとともにサイドプロジェクトとして始動しました。そして半年間かけてイラストを完成させました。絵本の完成を確信できるようになって、初めて周囲の人にアイディアを共有しました。 映画と絵本は別のプロジェクトととして進めていましたが、映画の制作に遅れが出たため、結果的には同時期に完成させることができました。それもまた予想外のことでしたが、今はよかったと思っています。すべてがうまくいったことにとても驚いています。
配給と出版
一般向けにこのような大きなスケールで作品を作るのは今回が初めてです。
何もかもやりながら学ぶ必要がありました。現段階では私が信頼する会社を通して映画を配給し、絵本に関しては自費出版を行います。
このアプローチには多くの利点と欠点があります。目標に応じてやり方を選ぶことが大切です。
私たちの作品にぴったりな配給会社と出版社を見つけ次第、作品を託したいと思っています。詳細については追ってご報告したいと思います。
リターン・オン・インベストメント(投資利益率)
このプロジェクトに費やす時間とエネルギーと引き換えに、何を期待していますか。作品が完成した時、どんな経験値を得ているでしょうか。どんな変化を起こしたいですか。リターン・オン・インベストメントは人によって異なります。
日本だけではなく、世界中に影響を及ぼしたいならば、収入を得る方法をどうにか作り出さなくてはなりません。地域の人々が映画の内容を実践し、その上に積み上げることができるように、私たちは絵本を制作しました。
映画の中では語りきれなかったことも、絵本の中では伝えることができると思ったのです。そして、映画や絵本を多言語に翻訳して世界に広めるためには絵本の収益が欠かせないと思ったのです。
これが私たちの計画です。しかし、これがいつ実現するかはわかりません。計画を進めるにつれて、進捗をご報告します。
映画と絵本がどのような反響を得るかは、時間が経てばわかるでしょう。この作品をリソースとして、アドボカシーが進むかどうかは最低でも一年はわからないと思います。多くの人の役に立つことを願っています。
最後に
映画を完成させることがどんなに大変か、知れば知るほど、完成させることが素晴らしいことだということがわかります。映画制作にはたくさんの不確定要素があり、さまざまな条件が揃わなければ実現しません。だからそこ、完成した作品は感動を呼ぶのです。
これから活動を始めるあなたに幸運を祈ります。重要な活動ほど、簡単ではありません。しかし、みなさんが世界に何らかの変化を起こし、子どもたちにとってより良い世界を作ることができると信じています。心のコンパスを信じてください。
心を込めて、
マット・ミラーと『ぼくのこわれないコンパス』チーム